結論:2026年1月1日から、PRTR法対象事業者は第一種指定化学物質を含む廃棄物の委託契約書への記載が義務化されています
2025年4月に公布され、2026年1月1日から施行された改正廃棄物処理法施行規則により、排出事業者の情報伝達義務が強化されました。 具体的には、「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(化管法、PRTR法)の届出対象となる事業者が、第一種指定化学物質を含む、または付着している産業廃棄物の処理を委託する場合、委託契約書にその化学物質の名称や量、または割合を記載することが義務付けられています。
この改正は、処理業者へ有害廃棄物の情報を正確に伝えることで、処理過程での事故や作業員の健康被害、環境汚染を未然に防ぐことを目的としています。 これまで明確な規定がなかった化学物質情報の伝達を制度化し、廃棄物処理の安全性を高めるための重要な変更点です。
改正の背景と目的:化学物質による環境リスクの適正管理
今回の法改正は、過去に廃棄物処理の現場で起きた事故事例が背景にあります。排出事業者から処理業者への有害化学物質に関する情報伝達が不十分だったために、処理作業中の事故や作業員の健康被害が発生したケースがありました。
このようなリスクを低減するため、事業者が化学物質の排出・移動量を自主的に管理する「PRTR制度」の仕組みを、廃棄物処理のプロセスにも活用することが求められるようになりました。 つまり、製造や使用段階で管理している化学物質の情報を、廃棄段階まで一貫して引き継ぐことで、サプライチェーン全体での化学物質管理を徹底し、環境保全上の支障を未然に防止することが大きな目的とされています。
対象となる事業者と廃棄物の判定フロー
今回の改正で委託契約書への記載義務が生じるかどうかは、すべての排出事業者に当てはまるわけではありません。自社が対象となるかを、以下のフローに沿って正確に判断することが重要です。
Step 1: 自社が「第一種指定化学物質等取扱事業者」に該当するか?
まず、自社が化管法(PRTR法)における「第一種指定化学物質等取扱事業者」に該当するかを確認します。 主な要件は以下の通りです。
- 対象業種:製造業や金属鉱業など、政令で定める24業種に属していること。
- 従業員数:常時使用する従業員の数が21人以上であること。
- 年間取扱量:いずれかの第一種指定化学物質を年間1トン以上(特定第一種指定化学物質は0.5トン以上)取り扱っていること。
これらのいずれかの要件に該当しない場合、今回の改正による新たな記載義務は生じないと整理されています。
Step 2: 委託する廃棄物に「第一種指定化学物質」が含まれているか?
Step 1に該当する事業者は、次に、処理を委託する産業廃棄物に「第一種指定化学物質」が含まれているか、または付着しているかを確認する必要があります。
第一種指定化学物質とは
人や生態系への有害性があり、環境中に広く継続して存在すると認められる化学物質のことで、2025年時点で515物質が指定されています。 代表的な物質には、トルエン、キシレン、鉛及びその化合物などがあります。 詳しくは、経済産業省のウェブサイトで確認できます。
この確認作業には、製品の安全データシート(SDS)や、製造工程で使用している化学物質のリストなどが役立ちます。廃棄物となった原材料、廃液、汚泥、使用済みの容器や布(ウエス)などが対象となり得ます。
判定フローまとめ
| ステップ | 確認事項 | 判断 |
|---|---|---|
| Step 1 | 自社はPRTR法の届出対象事業者か?(業種、従業員数、取扱量) | No → 記載義務なし Yes → Step 2へ |
| Step 2 | 委託する廃棄物に第一種指定化学物質が含まれる・付着しているか? | No → 記載義務なし Yes → 記載義務あり |
より詳しい判定手順や排出事業者責任については、こちらの記事もご参照ください。
排出事業者責任チェックリスト|環境省通知を実務で使う手順
実務上の具体的な対応事項:3つのポイント
記載義務があると判断された場合、実務担当者は以下の3つの対応を進める必要があります。
1. 産業廃棄物委託契約書の変更
改正後の廃棄物処理法施行規則第八条の四の二に基づき、委託契約書の法定記載事項に、含まれる第一種指定化学物質の「名称」及び「量または割合」を追加する必要があります。
含有量や割合については、必ずしも実測値である必要はなく、SDSの情報や文献値、製品の配合比率などから算出した推定値でも差し支えないとされています。 また、「〇%~〇%」といった幅を持たせた記載も可能です。
経過措置について
この改正の施行日(2026年1月1日)より前に締結された契約書については、直ちに再契約を結ぶ必要はなく、次回の契約更新時まで猶予される経過措置が設けられています。 契約更新のタイミングで、新しい記載事項を追加した契約書を締結するか、覚書を交わすなどの対応が必要です。
委託契約書の必須項目については、以下の記事で詳しく解説しています。
産業廃棄物委託契約書の法定記載事項|必須項目を条文で解説
産業廃棄物の委託契約書 2026年改正|対象判定と経過措置の実務
2. 廃棄物データシート(WDS)の活用
契約書にすべての化学物質情報を記載するのが難しい場合、環境省が活用を推奨している「廃棄物データシート(WDS)」を添付する方法が有効です。 WDSは、廃棄物の性状や含有物、取り扱い上の注意点などを処理業者に伝達するための標準的な様式です。
今回の法改正に合わせてWDSの様式も更新されており(第3版)、第一種指定化学物質に関する情報を記載する欄が設けられています。 契約書には「詳細については別紙WDSに記載」と記し、最新版のWDSを添付することで、確実な情報伝達が可能になります。
WDSの具体的な書き方やテンプレートについては、こちらの記事をご覧ください。
廃棄物データシート(WDS)の書き方|Excelテンプレと項目別解説
3. 社内での情報共有と管理体制の構築
化学物質を管理する部署(環境安全、製造など)と、廃棄物処理契約を管理する部署(総務、法務など)が異なる企業は少なくありません。今回の改正を機に、部署間の連携を強化し、社内での情報共有体制を再確認することが重要です。
- 化学物質情報の集約: 各部署で使用している化学物質と、それがどの廃棄物に混入する可能性があるかを一元的に把握できる仕組みを構築する。
- 担当者間の連携: PRTR制度の担当者と廃棄物管理の担当者が定期的に情報交換を行い、契約書に記載すべき内容に漏れがないかを確認する。
- 処理業者とのコミュニケーション: 不明な点があれば、契約している処理業者に相談し、どのような情報が必要か事前にすり合わせを行う。
よくある質問(Q&A)
Q1. 含有量がごく微量でも記載は必要ですか?
A1. 廃棄物処理法上、含有量の下限値は定められていません。したがって、PRTR法の届出対象事業者が排出する廃棄物に第一種指定化学物質が意図的・非意図的にかかわらず含まれる、または付着している場合は、原則として記載が必要と解されています。ただし、PRTR法の届出対象となる取扱量の基準(年間1トン以上など)が、一つの目安となると考えられます。
Q2. 対応を怠った場合の罰則はありますか?
A2. 委託契約書への法定記載事項の記載漏れは、委託基準違反(廃棄物処理法第12条第6項)に該当する可能性があります。委託基準に違反した場合、措置命令の対象となるほか、違反が悪質な場合には罰則(3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方)が科される可能性も指摘されています。
Q3. 処理業者から含有量の分析を求められたら応じるべきですか?
A3. 必ずしも分析が必須ではありません。前述の通り、SDSや文献値など、合理的に推定できる情報があれば足りるとされています。 しかし、処理業者が安全な処理方法を判断するために、より詳細な情報が必要だと判断した場合は、排出事業者責任の観点から、協議の上で必要な情報を提供することが望ましいでしょう。
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出典
※本記事は2026-08-20時点の情報に基づく一般的な解説です。